2020年12月30日読了時間: 8分「花は永遠の夢を見るか」 鎖骨花は永遠の夢をみるか 鎖骨 『わたしの人生は夢だった けれど 夜の闇へ 白昼の彼方へ 幻のように あるいは無となって 希望が消え去ったからといって 意味のない夢だったとはいえない わたしたちが見たり感じたりしてることも 所詮は夢のまた夢なのだから』...
2020年12月30日読了時間: 14分「鏡面」 一遼次郎「鏡面」 一 遼次郎 この世浮世や幾年か 行きたや見たし白鷺に 烏屈みて飛び込まん 烏屈みて飛び込まん この世憂世や生き地獄 行きたや見たし白鷺の 烏自ら飛び込まん 烏自ら飛び込まん 一 青と白のカラーリングの列車が、屋根のないプラットフォームに滑り込む。...
2020年12月30日読了時間: 14分「あしたに消える風の中」 田川一人あしたに消える風の中 田川 一人 人は、見たいものを見たいように見る。同じように我々は見せたいものを見せたいように見せる。それが別人のごとく着飾った自分の姿だろうと本当は存在しない虚構だろうと関係なく、科学技術はその欲望を叶えてみせた。...
2020年12月30日読了時間: 6分「未来と希望」 白龍未来と希望 白龍 その日は寝覚めが酷く悪かった。体が鉛のように重く、思考が霧散していく。脳の中で髄液があふれ出す感覚が広がり、ドロリとした液体で脳内が満たされる。次第に現実と夢との境界が曖昧になっていき、およそ思考と呼べるものは彼方へと消えていった。...
2020年12月30日読了時間: 5分「沈み、溺れる」 大峰真霧沈み、溺れる 大峰真霧 私も彼女も、互いの名前すら知らない。 それでもなぜか、私たちはお互いに解りあっている。 生ぬるい海水が足指の間を浸し、波にさらわれた砂に足を埋める。濡れた砂を踏みしめて、重い水の中へ。夏服のスカートの裾は海面を撫でて、やがて水に蝕まれて沈んでいく。水...
2020年7月30日読了時間: 62分「花といのちとアフターグロウ 夏の章」 亜流アフターグロウ/ 一九九五年の夏は、生死の二重する季節。 逃れたい母と、縋りつく小鳥と。 朝比奈春香は、不思議な少女だった。 /――残照 * 蝉が騒ぐ、木の肌に身体をあわせて。蝉が死ぬ、街路樹の下で。 彼らの死骸を、蟻や風や日の光と熱が解体し、僕の目から見えなくした。それで...
2020年7月30日読了時間: 2分「世界の話」 須戸鳴子「人は1人では生きられない」 なんて月並みな言葉。この言葉が意味するところは「人は誰かと関わり合いながら生きている」とかそういうことだろう。確かに人は1人では生きられない。肉体的にも、精神的にも。僕も例に漏れず、1人では生きることのできないただのヒトだ。今この瞬間もどこかで...
2020年7月30日読了時間: 4分「今日はハンバーグ」 椎名南瓜それは突然の出来事だった。平穏な日々を過ごしていた私の日常が突然崩れ去ったのだ。 どうして? 私が何をしたというの? 清く正しく美しく、品行方正清廉潔白、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は……とにかく、私は今まで悪いことなどせずに生きてきたのだ。それなのにどうして、どうしてこんな...
2020年7月30日読了時間: 1分「私は美少女Z」 美少女(わたし)私は美少女 鏡よ鏡、鏡さん、世界で1番可愛いのは私よ 毒リンゴも私の可愛さに頬を染め上げてしまうのよ 私は美少女 ビビデバビデブー? 私は変身しなくても可愛いの ガラスの靴は足が痛くなるからいらないわ 私は美少女 眠っていても可愛いの...
2020年7月30日読了時間: 1分「レポート」 朝喜あと何人殺せば良いのだろう 僕は何人殺せば良いのだろう いつまで殺せば良いのだろう 今日は二人殺した 明日は三人殺さなければならない 殺したくないからと 今日の二人を見逃せば 明日は五人殺さなければならない 殺すことは大前提 見逃す事は許されない 心はいつも泣いていて...
2020年7月30日読了時間: 7分「独白」 六道朝喜もぐらは光を知らない。自分の住む場所は土の中であり、今まで不満を持ったことがなかった。 「分不相応な行動は体に毒だ」かつて母が口酸っぱくもぐらに言い聞かせた言葉だ。母の言葉に疑問を抱くことなく、母の言う事なら問題もないと信じきっていた。あの日までは。...
2020年7月30日読了時間: 24分「孤独」 大保江冬麗少し昔の話である。 私は銀行の職場を定年で退職し、妻と共に二人で穏やかに暮らしていた。妻はそれほど美人ではなかったが、見苦しくもなく、極めて優しく気遣いのできる女であった。私は二十歳で嫁を貰い受け、溺愛することも無ければ、全く愛さぬことも無いような塩梅で人生を共にしてきた。...